スタジオツアー
東京について

「ハリー・ポッター」シリーズのなかで、もっとも長く親しまれてきたセットの1つがホグワーツの大広間です。このセットはシリーズ第1作『賢者の石』のクランクイン（2000年9月29日〈金〉）に合わせて建設され、今では魔法ワールドを象徴するロケーションになりました。

スタジオツアー東京では、大広間のレガシーを残した“匠（たくみ）の技”を間近で鑑賞できます。広々とした空間、ホグワーツの全校生徒400人以上が着席するテーブル、そして4つの寮を象徴するデコレーションの数々。壁を飾るたいまつにはグリフィンドール、レイブンクロー、スリザリン、ハッフルパフのシンボルがあしらわれ、先生用の長テーブルのうしろには4色のビーズが入った“寮別ポイント計”が……。この砂時計式の小道具にはそれぞれ数万個のインドビーズが使われたため、英国はビーズ不足に陥ったとか！

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』

シリーズ第1作の公開からたった3日後の2001年11月19日（月）、早くも第2作の撮影が始まりました。フィルムメーカーは、何人もの革新的な技術者を採用し、視聴者が画面で目にする魔法を創出しました。

この作品でデビューした屋敷しもべのドビーは、ハリーポッターシリーズで最も人気のあるキャラクターの1人ですが、才能にあふれたスタッフが複数名がかりでドビーの造形に関わり、あの忘れられないシーンが生み出されました。ドビーの完成までには3カ月を要しました。美術チームのロブ・ブリスはドビーのデザイン画を監修し、ニック・ダドマン率いるクリーチャー制作室は精巧な模型を制作。そして、舞台裏においてはマネキンだったものが、模型の実写映像にCG（コンピュータ・グラフィックス）を加え屋敷しもべに命を吹き込みことで、シリーズ屈指の愛すべきドビーに生まれ変わりました。

第二作では、神秘的なダンブルドアの校長室も初めて制作され、彼の個性の延長線上としてデザインされました。円すい形の室内には、床から天井まである本棚が造りつけられ、革製の書籍や古文書でいっぱいですが――じつは電話番号案内帳！撮影中は、厚手の番号案内を革で装丁し、古書に見立てました。

『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』

2003年に、第二作を手がけたキャストとクルーによって、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の撮影が再び開始されました。今回は、アルフォンソ・キュアロンが監督として、制作のデイビッド・ヘイマンがプロデューサーとして映画を制作し、謎めいたストーリーを強調するために、映像にもフィルム・ノワールの要素を取り入れました。

吸魂鬼のデザインは試行錯誤のすえに、ようやく決定しました。当初は操演技師が大判の布を水中で動かし、宙を舞う不気味な生きものに見立てようとしましたが、最終的には視覚効果で制作することになりました。そのほうが見映えが良く、空中を舞うリアルな動きが出せるからです。

第三作には「ハリー・ポッター」シリーズのなかでも、とくに手の込んだセットが登場します。それは三階建ての“夜の騎士バス”。ありえないほど背の高いバスですが、意外にもCG技術は使われておらず、実際に制作されました。スタッフは、使われなくなった二階建てバスを2台（訳注：問い合わせ中）調達し、部品を組み合わせ、車体を重ねて、このバスをつくりました。すべて本物ですから、ちゃんと走ります。バスの外観は、ロンドン周辺で撮影されましたの道路を実際に走りましたが、走行ルートを念入りに計画する必要がありました。夜の騎士バスは車高が高く、複雑な凝ったつくりになっているので、歩道橋や天井の低い構造物を避けて通らなくてはいけません。また、夜の騎士バスの不可思議に速いスピード感を演出するため、撮影では周囲の車両はが速度を落とすよう指示されして走りました。

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

2004年5月4日にスタートした『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の撮影は丸一年続き、2005年3月に終了しました。この第4作はスケールの大きな作品だけに、多様なシーンが数多く登場し、それに合わせて複数の新しいセットが登場します。この作品で、ホグワーツの大広間は“クリスマス・ダンスパーティー”の会場に装いを変え、室内には測りきれないくらい長い銀の布や氷の彫刻がいくつも設置されました。

三大魔法学校対抗試合の課題の撮影では、水中のシーンに向けて大型のプールを施工し、200万リットル以上の水を注入！　水中撮影は長時間におよびんだため、ハリー役のダニエル・ラドクリフはみごとダイビングのライセンスを取得しました。

このほかにも、三大魔法学校対抗試合の撮影には画期的な特撮技術が使われています。“鰓（えら）昆布”を食べたハリーが魚のような姿に変わる場面では、ダニエル・ラドクリフの手にストッキングをかぶせ、指の間の水かきに見立てました。

とくに大がかりな準備が必要だったのは、全長12メートルのドラゴンのハンガリー・ホーンテイルの模型を制作することでした。ジョン・リチャードソン率いる特撮チームはこの機械のドラゴンに長さ10メートルの火炎放射器をセットし、ホーンテイルが口から本物の火を吐く場面を撮影。しかしながら、撮影後、ホーンテイルの模型は視覚効果チームによってCG映像に置き換わりました。

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

キャストとスタッフは前作から1年間の休止をへて、シリーズの撮影を再開しました。『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』は2006年2月6日にクランクインし、作中にはシリーズ史上もっとも大胆で技術的にも難しいセットが登場します。

とくに魔法省のセットはスケールもデザインも圧巻です。省内の“予言の間”を舞台にしたシーンはすべてブルースクリーンを背景に撮影されたため、視覚効果チームは大変な努力を要しました。それまでのハリーポッターシリーズでもグリーンスクリーンを使って似た技術を使うことはありましたが、セット全体にブルースクリーンを張りめぐらせるのは初の試みでした。

輝かしい魔法省のアトリウムはハリーポッターシリーズ最大級のセットで、ハリー役のダニエル・ラドクリフやハーマイオニー役のエマ・ワトソンもお気に入り。その次元広さは息をのむほどで、なんと、二階建てバスが50台も入ります！

もうひとつの印象的なセットがドローレス・アンブリッジのオフィスです。冷徹なアンブリッジ先生は、このオフィスに生徒を呼び出し、ペナルティを与えます。ピンク一色の壁一面に飾るはネコの絵皿がずらり。絵皿のモデルに40匹の保護ネコが採用されました。撮影が終わると、ネコたちはそれぞれ里親のもとに引き取られましたが、新しい飼い主は自分のネコが映画に出ていたセレブとは伝えられませんでした。

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』

シリーズ第6作『ハリー・ポッターと謎のプリンス』がクランクインしたのは2007年9月24日。前作の公開から、わずか74日後のことでした。第6作はホグワーツの校内がおもな舞台になるため、なじみのセットを拡張する必要がありました。

魔法薬学の教室は以前にも作中に登場しました。石造りのアーチには金文字の化学式が刻まれ、ずらりと並んだ数百のガラス瓶にはオモチャのイモリや動物の骨など、めずらしい原料が入っています。この作品でも教室のつくりは基本的に変わっていませんが、スラグホーン先生の授業に合わせて大幅に拡大されました。

一方、ウィーズリーの自宅“隠れ穴”は死喰い人の襲撃によって全焼します。撮影に使われたミニチュア模型（1/3スケール）はいったん丸焼けになりましたが、続編に向けて作り直されました。

デイビッド・イェーツ監督はロマンチックな要素も盛り込み、大人びたハリー、ロン、ハーマイオニーの恋愛模様を描きました。ところが、それとは対照的だったのがロン役のルパート・グリント。撮影中に21歳の誕生日を迎え、みずから子供をテーマにしたお子さま向けの誕生パーティーを企画し、スタッフ全員で盛大に祝ったとか！

『ハリー・ポッターと死の秘宝』 PART1＆ PART2

シリーズ最後の2部作は続けて撮影されることになり、『ハリー・ポッターと死の秘宝』 PART1は2009年2月19日（木）にクランクインしました。PART2を合わせた撮影期間は250日の予定でしたが、結局は478日間におよびました。

この最終章では魔法界の全面戦争が勃発し、ホグワーツ城が壊滅状態に陥ります。そのため膨大な数の小道具が必要になりました。“がれき”の材料になったスチロール樹脂は32トンにのぼり、5台のトラックに分けて撮影現場に搬入されました。戦いのあと、ヴォルデモートとドラコ・マルフォイはハグを交わしますが、これは完全なアドリブ。ドラコ役のトム・フェルトンが見せた驚きの表情は演技ではありません！

ホグワーツの戦いには魔法の杖が無数に登場します。小道具チームのバリー・ウィルキンソンはこのシーンのために、スタント用も含めて500本以上の杖を制作しました。ちなみにハリー役のダニエル・ラドクリフがシリーズをとおして使用した杖は約70本、めがねは160本になりました。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』

ハリー・ポッターがホグワーツに入学した年から、さかのぼること70年。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では、魔法動物学者のニュート・スキャマンダーは愛用のトランクに魔法動物を詰め、ニューヨークにやって来ます。監督デイビッド・イェーツ、脚本Ｊ.Ｋ.ローリング。撮影は「ハリー・ポッター」シリーズの制作拠点、ワーナー・ブラザース・リーブスデン・スタジオで行われました。

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』

第2作では“黒い魔法使い”ことゲラート・グリンデルバルドが台頭。グリンデルバルドは支持者を集め、勢力を拡大し、純血の魔法使いが人間を支配する世界をつくろうとします。ニューヨークとパリを舞台にストーリーが展開し、フランス魔法省がスクリーンに初登場。

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』

2022年に公開されたシリーズ第３作。ダンブルドア先生がグリンデルバルドのたくらみを阻止するため、教え子のニュートたちと力を合わせ、危険なミッションにのぞみます。監督にデイビッド・イェーツ、出演にエディ・レッドメイン、ジュード・ロウ、マッツ・ミケルセンを迎え、ワーナー・ブラザース・リーブスデン・スタジオを拠点に撮影されました。